「帯電防止シリコーンスポンジシート」の開発も大詰めのところまでやってきました。
写真の試作品ですが、5mm × 300mm × 300mm です。
先日、大阪産業技術研究所に訪問し、JIS L 1094 のA法(半減期測定法)の試験を行いました。
結果は以下の通りです。
帯電防止シリコーンスポンジシート(開発品)の特徴
半減期0.1秒(実質的に0.082秒)という数値は、一般的な「帯電防止」の領域を超え、「導電性」に極めて近い、非常に強力な静電気除去能力を示しています。
電荷を「一瞬」で逃がします。静電気を絶対に溜めたくない箇所や、素早くアースに落としたい箇所には最適だと考えられます。
この「一瞬で電荷を逃がすスピード」と「シリコーンスポンジの物理的特性(クッション性、密着性、耐熱性)」を掛け合わせることで、特定の産業分野において、これまでになかった付加価値を与えることができるかもしれません。
考えられる用途としましては...
1. ファクトリーオートメーション(FA)および自律走行ロボット(AMR)周辺
物理AIやAMR、自動搬送ロボットの稼働現場では、駆動部やタイヤの摩擦によって絶えず静電気が発生します。
センサー周辺の緩衝材兼アース経路: LiDARやカメラなどの精密センサーを振動から守りつつ、周辺に帯電した静電気を瞬時にシャーシ(アース)へ逃がすガスケットとして最適です。
充電ステーションの接触バンパー: 接触時の衝撃を吸収しつつ、ロボット本体に溜まった電荷をドッキングの瞬間に素早く逃がす役割を果たします。
2. 電池・電源部品のハウジングシール
バッテリー周辺や電源モジュールは、発熱を伴うため耐熱性が求められ、同時に静電気による発火やノイズを防ぐ必要があります。
バッテリーケースのパッキン: シリコーンの優れた耐熱性・へたりにくさを活かしつつ、ケース内外の電位差を0.1秒でフラットにするため、ノイズ対策(EMIシールドの補助)や安全対策として機能します。
3. 粉体プラントや防爆環境でのジョイント・シール材
食品加工プラントや化学薬品、樹脂ペレットなどを空圧搬送する配管では、すさまじい摩擦帯電が起こり、粉塵爆発のリスクが常に伴います。
配管の接続部(ウレタンやシリコーンのジョイント部): 帯電を許さず、発生した端から0.1秒でアースに落とし続けるため、着火源となる火花放電(スパーク)を完全に封じ込めることができます。
4. フィルム・紙・繊維のロール搬送工程
絶縁体のシートを高速で巻き取る工程では、数万ボルトの静電気が発生します。
除電ワイパーやガイドローラーの被覆: ワーク(製品)を傷つけないスポンジの柔軟性を活かし、物理的に接触しながら瞬時に静電気を吸い上げる用途で高いパフォーマンスを発揮します。
CNT入りシリコーンスポンジ(参考)の特徴
こちらのシリコーンスポンジは「カーボンナノチューブ」を練りこんで発泡・架橋させたものになります。
1. 極めて優れた「帯電しにくさ」
+10.0kVという非常に高い電圧を印加(コロナ放電)しているにもかかわらず、サンプルに蓄積された最大の電圧(飽和帯電圧)がわずか +0.44kV (440V) に留まっています。絶縁体のシリコーンであれば数kVまで一気に跳ね上がりますが、このスポンジは電圧をかけている最中からすでに電荷を逃がし続けているため、これ以上帯電しません。素材としての「帯電のしにくさ」が優秀です。
2. 適切な静電気減衰スピード(半減期)
帯電した0.44kVの電圧が、半分の0.22kVに下がるまでの時間(半減期)が 3.263秒 です。
金属や高導電性ゴムのように瞬時に電荷を逃がす(半減期0.1秒未満など)と、逆に急激な放電(ESD)を引き起こして電子部品などを破壊するリスクがあります。3秒台という時間は、電荷を「穏やかに、かつ確実に」逃がす静電気拡散性の領域(ディシパティブ)として非常に理想的なスピードです。
CNT入りシリコーンスポンジ
総評
「ただ静電気が抜ければ良いわけではない」「用途(電子部品に直接触れるか、単なるアース経路か)によって最適な半減期は異なる」という、ゴム成型や表面処理の設計において非常に重要なポイントになります。
宏陽高分子では、帯電防止シリコーンスポンジの開発をこれからも進めていきますので、何卒ご期待いただければ幸いです。